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ヒステリシスの模索

 

 競技用に用いられる事が多い「直巻きスプリング」の選択について説明します。

日本国内を始め、世界的にも多くの直巻きスプリングが競技用パーツとして生産されています、そのため選択肢が多く、使用目的に合った基準が定まり難くい事が現状と成っています。

また、海外ブランドの中には、国内においてライセンス生産されている物も有り、より一層、選択を難しくしている事も事実です。そこで、大まかな推奨スプリングを紹介すると共に、その特性や特化性を参考にして頂ければ幸いと思います。

 

 直巻きスプリングの選択として、その使用環境となる 対荷重(輪荷重及びバネ下荷重)及び作動速度(レバー比から求められる実質速度やタイヤ偏平率など)から最適なレート及びヒステリシスを選択する必要が有ります。競技用の場合、特に重要と成る物がヒステリシスです。

同ラインナップ商品で有っても「設計者の意図」と成る「ヒステリシス的なラインナップ」から外れる物も存在するため注意が必要です。

また、車両開発用のサスペイションオンザカーテスターや一部のダンパーテスターなどにはヒステリシスを計測グラフで検証する事が可能ですが、スプリング単体での伸縮にともなうヒステリシスの計測グラフ化は一般的には普及していません。

このため、設計者の意図となる「応力の設定」を明確に知るには、鋼線張力を測定後、ラインナップ商品の原寸から逆算する方法しか有りません。が、同張力の場合はある程度の経験が有れば、「見比べれば判断が付く」モノです。

 

ヒステリシスを応力数値として捉える場合、数値が高い物を「高応力」、低い物を「低応力」、とします。

これを作用する「作用力の方向性」として捉える場合、伸び方向の追従性が向上した物として高応力の物を「リフトフォースタイプ」。 縮み方向の追従性が向上した物として低応力の物を「バンプフォースタイプ」として捉えます。

このように、スプリングのヒステリシスはその設計・製造段階において、ある程度の領域で、それらの記憶の中に埋め込まれたモノとして捉えて下さい。

しかし、記憶されているモノだからと言って、用途が限られるモノでも有りません。

使用環境が異なる場合、自ずと、その作用に対して特化性を示す要素を持ち合わせています。

それが、プリロード(テンション効果)効果です。

プリロード効果を使用する場合、その殆どがその効果により特化性が「リフトフォース側」へ変化します。

ただ、その特化性となる量的変化は、使用する鋼材本来の硬さとして示される「鋼材張力」(ハイテンションクロム鋼・ハイバネートクロム鋼など) また「鋼材線径」(過渡的な線形を選択後ブルーイングにより変性するモノ) また、エンド処理(座巻き角や密着代またはその有無)により異なります。

 

このように直巻きスプリングを選択する場合、その外見から、内径(ID)・自由長(IN)・線径・巻き数・鋼材張力・などからある程度の比較判断は可能です。

 

 私的な見解ですが、国内メーカーで多く利用されている物にSwift製が有ると思います。

OEMでの制作も多く手掛けていますし、規模的にも製品精度的にも信頼出来る商品だと思います。

設計に見て取れる「造り手の意図」も明確で、ヒステリシス的なバランスも明確に表現されています。

主流となる6inシリーズはID-60 ID-65 シリーズにおいて明確にヒステリシスのバランスが異なります。

基本的にリフトフォースを主観としていますが、プリロード効果は座巻きにより(密着が無い若しくは密着代が少ない)少な目の設計です。

鋼材張力は国内での平均的数値(200kgf/mm)の物を使用しています。

 

 競技車両に多く用いられている物にHYPERCO製が有ると思います。

ライセンス生産が有るため、私的には本国から取り寄せて使用しています。

安易に見極める方法として、IDが58mm(in生産)のモノが本国生産品です。

ライセンス生産されている物は、本国生産品のモノが一種有れば、見比べて判断が出来るほどヒステリシスのバランスが異なります。張力的に一般的なモノを使用している為と思われますが。。。。

本国生産の商品については、「造り手の意図」は最も優れた形で表現されています。

製品精度も高くオーバーロード率も低いため競技で使用する場合、高い信頼性を有しています。

また、どのラインナップに対してもヒステリシスのバランスは優れていますし、使用環境の見込みもなされています。競技用スプリングとして、最新のトライも続けていますし、私的には「一押し」の商品です。

基本的にバンプフォースを主観としていますが、鋼材張力が高いためプリロード効果も高く現れます。

またその量的にも適応性が高く、レングスの設定もその適応性を考慮したヒステリシスのバランスがなされています。(レングスが大きな物は多くのプリロードに対して適応性を持たせている)

リフトフォース・への特化性に対しても幅が広く、セットアイテムとしては最善です。

ID58シリーズ 5in・6in・(リフトフォースに特化し易い) は特に推奨します。

鋼材張力は当然、ハイテンションクロム鋼(220kgf/mm)を使用しているためトップクラスです。

ただ、入手が困難な事と、価格的に難ありです。 また、高張力から、タンパー減衰のヒステリシスに大きな影響を与えるため、予め、減衰力を含むロッド反力をリフトフォース側え考慮する必要が有ります。

また使用環境(座面の歪み等)が整わない場合、仮想中心線の維持が困難と成り易く、またそこから発生する予期せぬ反発力も大きく発生します。そのためHYPERCOでは座面修正装置としてハイドロリックビーチを推奨しています。が、ヒステリシス的(スラストが多く発生するため、ねじり反力が減少)にリフトフォースが減少傾向と成るため私的には推奨していません。

 

  

続いて、競技車両に多く用いられる物に Eibachiが有ると思います。

こちらも国内でライセンス生産が有ります。 私的には現在、競技用として使用する事は有りません。

本国生産品の場合、ハイバネートクロム鋼を使用しています。このためHYPERCOの性能に非常に類似しています。ラインナップとして使った経験が有りませんのでヒステリシスのバランスは解りません。

鋼材張力は以前にどこかの文献で見た記憶では220kgf/mm前後は有ったと思います。

 

 

私的に、最も多用するスプリングが、(株)エンドレスから発売されている X-coils-R シリーズです。

魅力は端的にその張力に有ります。実質測定で約230kgf/mm前後の高張力鋼に成ります。

スプリングの材料は鋼線です。その鋼線を製造する段階で添加する物質の種類と、その鋼線を熱錬する行程また、巻き取り後のブルーイング(再熱処理)で張力は変化します。

 

 

今まで、国内でのスプリング製造では不可能とされてきた220kgf/mm超の張力に成功した事が私をそうさせています。 正直、まだ完璧と言える段階では有りません、オーバーロードも掛り易く、初期のヘタリ率も有ります。使用環境に対しても繊細でヒステリシスの設定も困難です。

 

しかし、国内の技術力でハイテンションクロム・ハイバネートクロム・鋼を超える物が製造され、それを使える喜びと、開発・製造・販売・に熱意を持って取り組むメーカーに魅力を感じます。

 

 

いつも、使用して頂けるお客様にこう言います。 

「初期のヘタリは発生します。けど、コレほど良いスプリングは国内には存在しません。」 

コレが私の推奨理由です。

 

 

 

TRACE事業部

代表  渡海 正雄

 

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