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プリロードについて

私のブログからの引用で、「プリロード」についての私説です。参考にして頂ければ幸いです。

 

 

「プリロード・・・①」

 

「プリロード」、良く耳にする言葉ですよネ。(笑)  業界用語??(爆笑)

コイルスプリングにテンションを掛ける事はご存知と思いますが・・・・さて、「その意味は??」

なかなか明確な答えをお聞きした事が無いですし・・・ 

どんな文献を探しても明確な答えは書いて有りません・・・・

 

 私も、以前は理解していませんでしたし、理解しようとも思っていませんでした。

何故なら・・・・幾度となく、聞くままにプリロードの調整は試みましたが、いつも答えは同じでした。

確かに、反応感やレスポンスの向上は有ります。。。。が、一定のロールから跳ねる挙動が現れる事と、

当然のようにリバウンドストロークの不足から接地性が落ちてしまい、唐突にグリップを失う挙動が現れていたからです。

 

 当時は、「フォミュラーで使う技で、到底、足長オジサンの箱車には不可能なんだヨ。」 って感じでしたネ。

しかし、スプリングの事を知れば知るほど、その重要性に気付かされる事に成っていくんです。(笑)

スプリングを設計する場合、定数は簡単に造れます。 特に、低い定数の場合はなんの問題も無く・・・・(笑)

難しいスプリングの設計は、それなりの荷重が存在する中で大きなストロークを必要とされる場合なんです。

特に厄介なのが、レバー比・荷重・ストローク・座面変化・等が大きなモノなんですヨ。

この場合、全てを補えるモノを製作する事は不可能ですから、何かを犠牲にし、ある程度の条件をクリアー出来る

「打算の産物」を造る事に成ります。(笑)

 

 その条件の中で、最も厄介なモノが応力設定と成ります。

以前にも応力のお話は幾度となくしましたが、追従性の観点からは高いモノが有利と成り競技に適している訳なんですが、条件をクリアーするために、まず犠牲と成る部位なんです。

ここで登場する、「条件」こそが、プリロードと大きく関係するモノなんです。。。。。。

 

 

「プリロード・・・②条件」

 

前回の「条件」を紐解くために、一つの例題を使います。

ここでは、あえて直巻きクローズエンドでは無く、オープン・クローズトのスプリングを例題としますネ。

 

オープン・クローズドの代表的なモノで、高レートのモノと言えば、以前にも紹介した、弊社のZ33・Z34に使用される

モノと成りますよネ。(笑) 定数22K 線径17.75mm ID100mm 自由長180mm 巻き数4.4 です。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ID比較で考えると、ID60換算で自由長108mm前後のモノと成りますよネ。(笑)

 

 オープンエンド構造のため、座巻き3/8と成りますから、クローズ比較で総巻き数、約4巻きと成ります。

線径比較の場合は、約10.65mm・・・・・

想像するだけで・・・有り得ない、高応力タイプのスプリングと成ります。。。。。(笑)

 

 追従性的な観点からは、有利と成りますが、実はコレ・・・そのままでは使用出来ないんです。

って言うと語弊に成りますが、有る「条件」をクリアーしないと、使用出来ない特性が有るんです。

まず、使用環境の問題で、オープンエンド化されています。 コレは、アームとボディー間に挟み込む構造で使用するために、座面の変化が大きく成る事を考慮しての構造と成ります。

オープンエンドは以前にもお話しましたが、スプリングの歪み(仮想中心線)対策で有り、適切な環境では有りませんよネ。

 

 ここまでお話しすれば勘の良い方はもうお解かりと思いますが、設計上、高応力過ぎるんです。

本来なら、線径を下げて不等ピッチと言う考えも有りますが、実際の作動シロ(作動レート)を考えると実は同じかそれ以上の応力に成ってしまうんです。

 この場合、どのような現象が起こるのか興味の有る方は試作をお貸ししますが・・・・(笑)

お答えは、跳ねる挙動が多く、リバウンドストローク(セット長不足)不足から、浮き足に成りやすい。です。

そこで、設計上の「条件」を考えます。

  

条件① 応力的な観点から、低応力化されたモノ

条件② リバウンドストローク(セット長)の確保

条件③ 低応力化と定数(線径)の融合

 

と成ります。 これらを解かりやすく説明すると、オープンエンドから発生する跳ねを防ぎ、それなりの硬さをつくり、セット長を稼ぐ・・・・です。

 

 つまり、低応力だけでは追従性に掛けるため、追従性をある程度造るために線径を上げ、

それに見合う分のセット長を稼ぐために鋼種張力を下げて対処する事と成ります。つまり製造段階で「温間巻き」にするんです。

レース用どころか、現在では、純正でも温間巻きなんて無いのにネ。。。。(笑)

 

 この「製造段階での温間巻き」が必要とされる理由こそが、「条件」そのモノと成ります。

セット長の確保が、つまりのところプリロードの必要性を意味しています。 

直巻きスプリングにプリロードが必要とされるのもこれと同じで、座巻きに対しての作動シロと考えるべきなんです。

しかし、もう一つの大きな理由が、セット長自体に発生する「作動方向」に対しての考え方と成ります。

 

 

「プリロード・・・③作動方向」(ヒステリシス)

 

 「条件」で説明した、スプリングこそが「打算の産物」なんですが、残念な事にS耐 ST-3クラスのシリーズチャピオン車両で使用していた物で、他にも多くの競技車輌で良い成績を残せているんですよネ。(笑) 

 

 では、続きの「作動方向」へと進みます。 

前回の「条件」で説明したかった事は、セット代の造り方だったんですが、理解して頂けましたよネ?(笑)

セット代とは、スプリングの自由長から、輪荷重を受け、縮んだ分と成りますよネ。

 

定数計算だと、 自由長-(輪荷重/定数)=セット代と成ります。

 

 けど 「定数が同じでも製造方法を変えるとセット代は変えられるモノ」って事ですよネ。

その製造方法の中にも、今回の打算的なモノも有れば、巻き数・巻き角・座巻き処理、また張力なども有るんですヨ。

何故コレが必要なのか・・・・がっ「作動方向」へと繋がります。

 

 つまり「作動方向」とは意図的に一定方向に対して作動する余力を使う事なんです。

定数では、一定方向に対してでは無く、双方向に対して定数が存在する事と成っていますが、作動に対しての余力(セット代)を使えば、コレに方向性を持たせられることに成ります。

つまり、伸縮という双方の作動に対して意図的に一定方向の作動力を高める事が可能な訳なんです。

この場合、定数として働くのではなく、スピードつまり作動の速さ、「作動レスポンス」として考えます。

勘の良い方はもう解かりますよネ!? そうです、スプリングの余力とは、逆に言えば「余圧」を掛ける事でも作動方向に位置付け(方向と速さ)が出来るモノなんです。

 

 つまり、各々の環境に見合う対策として、「余圧」つまりはプリロードがセットアイテムと成ります。

しかし、逆の言い方をすると、全てのスプリングに対して、同じプリロードが必要な訳では無く、又、全てか同じ位置づけで使用出来るモノでは有りません。

理想とされるプリロードは、総合的なスプリングの硬度により変化するモノですし、

その使用環境によっても異なるモノと成ってしまいます。

 私的には、「ヒステリシスの応用」と言いますが・・・・・ (笑)

 

 

「プリロード・・・④捉え方」

 

 「作動方向」の位置付けから、伸縮時の作動に影響を与えるモノとして捉える場合、その環境に対しての考慮が必要と成ります。 コレを考える場合、スプリングの硬度・応力を固有振動数として考えれば解かり易いと思います。

輪荷重を超えないプリロードを使用した場合、たいていのスプリングは硬く成ったように感じます。

しかし実際の所、ストロークセンサーなどて測定すると、絶対量には変わりは有りません。当然ですが・・・

 

 しかしストロークスピードとしては、その差が見て取れる程に変化します。 

がっ、同じ定数・同じ張力の場合でも応力を変えると、その伸縮と言う双方に働くスピードに変化が現れます。

応力的に低いモノの場合、その変化は、縮むスピードが遅く成る方向として現れ、伸びる方向にはさほどの変化は現れません。

逆に応力的に高いモノは、縮むスピードにはさほどの変化が無く、伸びるスピードが速く成る方向性として現れます。

つまり固有振動的に、低いモノは縮みに影響し、高いモノでは伸びに影響する と成ります。

 

 しかしこれはあくまでも、自由長に対して数パーセントのプリロードの話なんです。

スプリングの座巻きなどで、セット代を稼いでいるモノの場合は、当然違った現れ方に成ります・・・・(笑)

 これを競技に使用するモノとして考える場合、

伸縮と言う双方の動きに対して抑制方向として考える場合は、低応力を・・・・・

追従方向として考える場合は、高応力を・・・・・となり、以前からお話ししている結果と同じです。

がっ、ある一定の総合的な硬度や、固有振動を超える場合、その使用条件には制約が発生します。

 

 これは、以前にお話しした。 スプリングの歪み率や蛇行率に関係してきます。

これが、もう一つのプリロードの使用方法と成るのですが・・・・「以前にお話しした直進安定性に繋がるモノ」

つまり、ある一定のプリロードの場合、作動方向の位置付けにより、歪み方向や蛇行方向に対しての作動を抑制するモノとして働きます。つまり作動方向が、違う方向に働き難くするガイト的な「力」と成る訳です。

 

 当然これらも、その条件により変化は有ります。 ガイド的な「力」と作動方向のバランスの中で、低応力のモノはその役割が大きく現れ、高応力の場合その役割が小さく現れます。また過渡的な高応力で一定の固有振動数を超える場合はガイド的な力が作動方向に働くように成り、どちらの抑制力も現れない場合も有ります。

ある意味、コレとは逆と成る、ノーマル車の「低定数スプリングの過渡的なプリロード」を考えれば理解し易いかもしれません・・・・

 

これらの事を総合的に考えれば、「箱車のような足長オジサン」での理想的なプリロードの使用環境の存在が見えて来ると思います。 

 

さて、いよいよです。。。。。がっ、その前に結論を先に言っておきます。

 

プリロードは、どのような形にせよ、スプリングの性能を引き出すモノとして絶対に必要なモノです。。。。(笑)

ココからは、それらの適応性と応用性を主体に説明していきます。

 

 

「プリロード・・・⑤適応性」(張力によるプリロードの量が変化する理由)

 

 スプリングの性能を判断する場合、当然その使用目的と使用環境が存在します。

ロードでの競技車輌の場合、少ないストロークの中での適切な面圧の確保が目的と成ります。

また、環境的には、使用する、タイヤ性能・輪荷重・レバー比・などの他に、伸縮環境が存在しています。

伸縮環境とは、以前から幾度となく説明していますので理解して頂けると思いますが・・・・スプリングの歪み・減衰力干渉・ストローク量などが有り、それらを総合的に考慮し、判断する事を前提にして下さい。

 

 スプリングの性能を判断する場合、私が一番拘る要素は、張力と線径のバランスです。

ある意味、定数と応力バランスに似た要素に思われる方もおられると思いますが、伸縮スピードを追従性と考える場合、製造工程での熱錬・ブルーイング・により変化する事が少ない「材料の硬度」として捉えられる張力に魅力を感じます。

 つまり、材料の硬度によりスピードを求め、線径で硬さを造る事と成りますから、張力が大きな場合、応力による双方の作動スピードをコントロールする事に幅が造れ、作動方向の位置付けをプリロードで調整すると、更にその自由度が増す事と成ります。

 

 以前にお話した、張力=速さ=追従性=グリップ力、はプリロード調整を前提にしているモノなんです。

「スプリングの絶対性能は、張力に存在している」 間違い無い事実だと思います。(笑)

張力により、必要とされるプリロードの量が変化する理由は、ココに有る事を理解して下さいネ。

張力によるプリロードの量を考える場合、純正のように、低い張力・低い定数の場合、必要とされる作動スピード・作動力を求めるためには、大きなプリロード量が必要になり、これとは逆となる高い張力の場合、少ないプリロード量でその効果が発生する事と成ります。

厳密に言うと、その必要性は応力による変化も有りますので、次回はそのお話を・・・・・

 

 

「張力によるプリロードの量が変化する理由」に質問が有りましたので、もう少し掘り下げて解説しますネ。(笑)

現在、主として使用されているバネ鋼は規格名称から、SUP・SAE・などに分類されていますが、この硬さの分類を総合的な強さとして示すモノが、引っ張り強度 (張力) と成ります。

 国内で一般的に使用されるオイルテンパー線の場合、張力は約190kgf前後となるのですが、特殊元素の添加や熱処理加工技術の工夫などで、HYPERCO社のハイテンションクロム鋼で約220kgf/mm・ジール製(OEM)X-COILS-Rで約230kgf/mmの張力を造り出しています。

 またアイバツハ社のモノも高張力鋼と言われていますが、私的に繋がりが有りませんので、明確な数値は解かりません、聞いた話では、210kgf/mm前後と言う事です。。。。(笑)

 

 ただ、ハイパーコイル・アイバッハ・については、ライセンス生産に成っていますので、国内製のモノに関しては、その張力に疑問も有ります。私的にはハイパーコイル・アイバッハを使用する場合、本国製のモノをお勧めしています。また、純正スプリングなどに使用されるモノは、180kgf前後と考えて下さい・・・・・(笑)

 

 つまり、張力を造り出すのは、鋼材メーカーの仕事で有り、厳格な規格製品として出荷され、それを使えるスプリングメーカーは「与えられた特権」として製造しています。国内で高張力鋼を生産指示(特許取得により)する事が出来、それを使用して生産されているモノは、私の知る限りX-COILS-R (OEM) だけです。コレが自動車用バネ鋼の現状です。。。。。(笑)

 

 

「プリロード・・・⑥応力的観点」

 

応力的観点からのプレロードの違いを考えます。

④で少し触れた内容と成りますが、今回は、逆と成る使用環境への適応性として考えてみましょう。

 

 一般的に、スプリングメーカーには、同じ定数に数種類のレングス設定 (自由長) が有ります。

これを応力設定と考えるのか?、歪み対策として考えるのか? により見えるモノは違ってくると思います。

 張力的に低いスプリングメーカーの場合、応力設定と考えて間違い無いと思います。

ただ、張力的に高いスプリングメーカーの場合、歪み対策として考えるべきラインナップも有ります。

 

 要するに、高張力鋼の場合、歪みを考慮した設計を意図的に行っているからなんです。

つまり、高張力鋼は自らの硬さで、伸縮と言う工程において、仮想中心線の維持が困難なモノに成るため、

予め低応力化する事により、歪み対策をしているモノなんです。

 

 これは、定数・応力・線径・の上昇に伴ない増加するモノですから、歪み対策を考慮しているモノは、線径の選択において意図的にコントロールしている設計が見て取れます。

つまり、高張力の場合、低応力化されているモノで有っても、少ないプレロードで対応出来る設計と成っていると考えるべきです。

って言うか、そう成ってしまうモノなんだと思います。。。。(笑)

 

 つまり、高張力を使用する場合、応力設定に関わらず、スプリングの伸縮環境において、仮想中心線の維持は必要不可欠だと言う事なんです。 逆に言うと、少ないプレロードにより効果は発生するが、仮想中心線の維持が無いと想定外の働きに成り易いモノだと言う事です。。。。。よネ(笑)

 

 

 では、いままでのウンチクをまとめましょう。

プリロードの量と適応性(グリップ力を発生させるための伸縮に伴う追従性)を考える場合、以下の条件を考慮する必要が有ります。

 

①定数

②応力

③張力

 

 この、①・②・③・の条件的に、低いモノでは、効果を得るために多くのプリロードを必要とし、高いモノでは、少ないプリロードで効果が得られる事に成ります。。。。。。なんと・・・・簡単な・・・・・(笑)

 

 ただ、使用環境の違いで求められるモノは変化します。 絶対的要素では有りませんが、現状、吊るしの直巻きスプリングを考える場合は、この程度で良いと思います。 

 

 

 

 

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